2020年1月27日月曜日

刈り込みのコツ

関東での修行時代、「刈り込みは形だ」と散々口酸っぱく教わってきた僕は、それに違和感を感じ続けていました。
確かに形は大事です。「形」というのは、綺麗に丸くすることや、円柱型にすることを指しています。形が良いということは、太陽の光をまんべんなくあびることができ、そういう意味で大事なことです。
刈り込みで形以上に大事なことはが、他にもいくつかあると思っていました。

イチイの刈り込み前
 刈り込みの手順として、最初にぜひともやりたいことは、熊手などで軽く叩くことです。
それによって絡んでいた枝などが外へ出てきます。また、蜂の巣などがあった場合に中から蜂が飛び出して来るので危険を回避できます。

そして、まずは枯れ枝を取ります。刈り込みを続けてきた木は、必ずと言っていいほど中が枯れ込んでいます。枯れ枝を取るだけで風通しが良くなり、陽の光が差し込みやすくなります。また、枯れ枝は固くて、他の枝と擦れ合うことで、他の枝も枯らしてしまう原因になります。また、枯れ枝は病害虫の原因にもなりますので、枯れ枝を取る作業は時間がかかりますが非常に大事です。

次に方向の悪い枝を取り払います。方向の悪い枝を取ると、穴が開いてしまうことがありますが、一時的に空いてしまったとしても、また塞がることが多いので、穴が開くことを気にせず、思い切って取り払います。どうしても不格好になるような逆方向の枝は、涙を飲んで残しますが。

次に頂点を決めます。どの位の高さが良いか、その場所の環境と、その木の状態から決めます。
それから横幅をどこまで削れるかを決め、頂点と横幅を曲線で描くように刈り込んでいきます。

しかし、これで終わりではありません。刈り込み後の木を全体に叩いてゴミを落とします。そうすると、輪郭線の内側に隠れていた枝がもう一度出てきます。それを再度刈り込みます。

次に、切り口の太いところは、輪郭線の内側で切り戻します。かなり太い枝があったら、それは途中で止めると反発しますので、元から外すようにします。
そして、もう一度木全体を払ってゴミを落とします。内側に引っかかっている枯れ葉や切ったばかりの枝が残らないようにします。これも病害虫を避けるためでもあり、風通し、日当たりのためでもあります。

イチイの刈り込み後
こちらが刈り込み後の写真です。
僕は多少の凸凹があったって良いと思っています。凸凹を直す時間があったら少しでも枯れを取る方に時間を割きたいのです。
「刈り込みは形」と教わってきましたが、僕の思う刈り込みのポイントは「濃さ」だと思っています。うっすらと木の反対の風景が見えるような濃さが理想です。
これが、光と風が程良く差し込む状態であり、木にとって健康的な状態なのだと思っています。

このうっすら光が差し込む濃さを作るためには、枯れ枝を取り除くことや、逆さ枝や太い枝を取り除いてあること、きれいにゴミを払っていること、そして程良い深さに刈り込んでいる必要があるのです。
「刈り込みは形」=「見た目重視」ではなく、「刈り込みは濃さ」=「植物の生育重視」でありたいと考えているのです。
庭師の中には刈り込みを舐めた発言をする人がいますが、僕は庭師修行の中で、刈り込みを覚えることは、樹木の手入れの真髄に触れる第一歩であると思っています。

刈り込み鋏を使うもよし、電動やエンジントリマーを使うもよし、最近では充電式電動トリマーも販売されています。どれもお勧めです。
一般の方も、ぜひとも実践してみてください。