2018年11月3日土曜日

農林高校の先生が僕の生徒に?

今日は岐阜県内の農林高校の先生が、現場作業を見学させてほしいとのことでした。
「生徒の進路先として、造園業界のことを聞きたい」
「造園科の教師として、現場の作業を何も知らずに教科書だけで教えているので、実際の作業を知りたい、作業をしている人の思いを知りたい」
「自分も定年後に剪定の仕事などできたらな、などと思っている」
そんな思いがあっての訪問のようでした。
実際にお客様のお庭で、松の剪定・椿の透かし剪定・ツツジやツゲの刈込を指導しながら、造園業の仕事についてや、植物の生育について、僭越ながら指導をしました。

実際に行う現場の作業は、先生にとっては掃除のこと・道具のこと・脚立の立て方・葉芽や花芽のこと・葉っぱのこと・幹のこと・徒長枝のこと・作業を行う上での思いなど、目からウロコなことが多かったらしく、メモを取りっぱなしでいらっしゃいました。「教科書に載っていないことばかり」だったそうです。それはそうだと思います。「見て覚える職人の世界」では、そういうことを理屈立てて説明できる庭師はとても少ないのです。

進路先としての造園業については、「いわゆる就職先とは考えない方が良い」と伝えました。就職先ではなく、「将来独立するための一時的な修行先」と考えてほしいと伝えました。
造園業は、「石のこと」、「土壌のこと」、「植物のこと」など、科学的にまだまだ分からないことだらけの世界であり、「美しさ」というこれまた基準のないことを目指している世界なのです。真剣に取り組めば取り組むほど、「分かったふりをして威張っている親方」とは上手くいかなくなるようにできています。
ぜひ、独立を前提に働いてほしい、と伝えました。というか、そういう気のない人には向いてないという気がします。

僕の仕事に関する考えは、今まで関わってきた多くの親方に対して「それは違うんじゃないか?」というアンチな考えから掘り下げて作ってきたものです。なので、他にはない、少々オリジナルな、植物寄りな考えで行っています。
先生、最後には僕の剪定の考えをとても理解してくださったようでした。作業を見る限りそう感じました。僕にとっては生徒第一号となったようでした。

先生、悩んでおります。
それで良いのです。
スピードは後でいくらでも早くなります。
丁寧に、植物の気持ちになってあげてください。

近くから見て。遠目から見て。他の木や風や光との関係も感じて。
庭師の仕事は「集中力」よりも「俯瞰力」です。